『ビルマ・シンガポールの従軍慰安所 (日本語仮訳版) 』を読む(1) はじめに

従軍慰安所を経営していた人物の詳細な日記が発見されたことは聞いていましたが、以前紹介したこともある犬鍋さんのブログで、その日本語版の存在を知りました。 この日記の概要や著者の人物像は、犬鍋さんの記事でご覧いただけます。

この資料はソウル大名誉教授の安秉直氏が古書店で発見したもので、日本語の仮訳版は京都大学大学院の堀和生氏と、神戸大学大学院の木村幹氏によるものです。 以下のページでこの仮訳版が公開されており、PDFでダウンロードも可能です。

ページ内ビューアーから閲覧できるようですが、使いにくいので、ダウンロードした方が読みやすいです。フロッピーディスクのアイコンが付いた「日本軍慰安所管理人の日記.pdf (3.23MB)(2,078)」というリンクから、PDFファイルのダウンロードが可能です。


私自身は慰安婦についてもその問題についても、しっかりと議論できるだけの情報も経験もありません。 しかし「どういう主張であれ嘘を混ぜるな」ということだけ、強く感じていますし、結局それ以外、まともな決着はあり得ないとも思います。 やってもいない罪が嘘として混ざっていれば、過去の責任を問われる側は、現在と未来のために受け入れられなくなります。 事実をひとつでも無かったと嘘を混ぜて主張すれば、責任を問う側は、その主張全てが受け入れられなくなります。

どんな犯罪者でも、嘘の罪に基き裁かず、嘘で罪を隠すことは許さない。 これは現在の裁判でも当前の基本的態度であって、国や歴史や民族に関わることだからと外すようなものではない筈です。 事実をどんな罪として扱い、どう裁くのかは、事実の特定が出来てからその先の話です。

とは言え、現在の事件でも証拠の確保が難しいのだから、70年前後も前のこととなると、何が嘘で何が事実か見極めるのは、さらに難しくなります。 それでもこの日記のように新たな資料が発見されるのだから、事実と嘘の見極めが少しでも前進する可能性はあるわけです。

こういった観点から、この日記の意義は大きいと思いますが、前述の通り、いわゆる慰安婦問題を論じられる知識も経験はありません。 しかし日記自体は、当時の雰囲気や、併合された朝鮮半島出身者の意識などが伝わって、読み物としてなかなか面白い。 そこで、時代や風俗を感じられる読み物として面白かった箇所を、テーマを決めて紹介しようと思います。

まず始めは、併合時代の朝鮮半島出身者である著者の皇国臣民意識を採り上げてみます。